【金属棟カバー両側固定安全金具】の開発について

「金属棟カバー両側固定安全金具」の開発理由

屋根からの転落事故防止のためには、足場設置は有効ですが、足場を設置できない建物や緊急対応が必要な場合は、屋根に命綱固定アンカー(安全金具)を常時設置しておけば、屋根作業時に安全帯を利用でき転落事故を防ぐことができます。
地震や台風等で屋根が万一破損した場合には、応急処置のブルーシートを安全金具に固定もできます。都度必要な足場設置費用に比べ、屋根に安全金具を常時設置しておく費用の方がはるかに安く、また何度も使えることから新築時から屋根安全金具を常時設置しておくことがあるべき姿ではないかと思います。
特に屋根の棟部に設置することは、頂部にあるため雨漏りリスクは小さく、太陽光パネルや太陽熱温水器等を設置する場合でも邪魔になりにくく、屋根全体をカバーできます。
足場を設置しない場合、
①梯子の固定と昇降時の安全対策
②安全金具の取付け時の安全対策
③梯子から安全金具迄の移動時の安全対策
④屋根作業時の部品・部材の落下防止対策
を詰める必要がありますが、厚生労働省発行の「足場の設置が困難な屋根上作業での墜落防止対策のポイント」のパンフレットが参考になります。
従来、屋根に安全金具を設置して置くという考えは少なく、商品も殆どない状態のため、マジカナテック㈱にて2017年から屋根安全金具の開発に取組み、
①瓦屋根安全金具
②化粧スレート屋根安全金具
③タル木固定化粧スレート屋根安全金具
④金属屋根縦葺平部固定安全金具
⑤金属屋根棟固定安全金具
⑥破風固定安全金具
⑦雪下ろし命綱固定アンカー(単管固定タイプ・棟固定タイプ)
⑧金属屋根縦ハゼ固定安全金具
の計8種類の商品開発を行い、木造住宅の屋根に安全金具を設置できる様にしてきました。
屋根安全金具の開発を進めるに伴い、鉄骨造の金属屋根の棟部分に固定できる安全金具がないかの問合せが多くあります。定期的なメンテナンスが必要なことから自前で棟部分の鉄骨の梁にプレート等を溶接し命綱固定アンカーを設置されているのが現状で、費用がかかる高価なものになっています。
鉄骨造・金属屋根の棟部分の下地材は木造と同様に止水処理があり、転びやすい構造で、ビス固定位置には制約があり簡単には安全金具を設置出来ません。鉄骨造用の棟固定安全金具の開発の必要性を感じ開発に取組みました。

鉄骨造・棟固定安全金具の検討

鉄骨造・金属屋根の棟部分の仕様は、止水処理のため転びやすい構造であり、安全金具を設置するには棟部分に耐力補強が必要です。
費用をかけずに、棟仕様を変えずに耐力補強をする方法はないかと検討した結果、金属棟カバーの上部両側に安全金具を耐力補強材として配置し、両側の棟下地材と金属棟カバーと安全金具をビスで一体化することで、棟下地材が転びにくくなると共に剛性が高まり、軒先方向の引張り強さが高まるのではと考え、「金属棟カバー両側固定安全金具」の開発を進めました。

「金属棟カバー両側固定安全金具」の引張り強さの確認

屋根安全金具を棟下地材の耐力補強材として用いた「金属棟カバー両側固定安全金具」を試作し軒先方向の引張り強さを確認しました。
試験の結果、〇金具幅70mm・φ5L100mmビス両側各3本とφ4.2L19mmビス両側各2本固定での引張強さ:1,300kgf(1.3t)以上を確認しました。耐力補強効果と小さな金具でも高強度を確保できること、アイストラップの位置は、側部ではなく使い勝手の良い上部の高い位置に付けても強度確保できることを確認しました。

「金属棟カバー両側固定安全金具」の使用用途

「金属棟カバー両側固定安全金具」は、①鉄骨造・金属屋根棟カバー部用として検討してきましたが、②木造・金属屋根棟カバー部(縦葺き・横葺き)にも使えますし、③化粧スレート屋根・金属棟カバー部、④瓦屋根・金属棟カバー部、⑤コンクリート屋根・金属棟カバー部にも使用することができ、多くの使用用途があります。
但し、強度確保にあたり安全金具を金属棟カバーの両側に設置することを条件としているため、屋根形状は切妻屋根や寄棟屋根の様な両流れ屋根でのご利用になります。

「金属棟カバー両側固定安全金具」の価格について

金属棟カバー両側固定安全金具の価格は、棟の両側で使用できますので片側設置用「金属屋根棟固定安全金具」を2個設置と比較すると約30%安くなります。安くなる理由は、安全金具を両側に固定することで転びにくく剛性が高まるため、小さい金具でビス固定本数が少なくてすむ為です。

「金属棟カバー両側固定安全金具」の耐漏水性

棟部分は屋根の頂部に位置し雨漏りしにくい場所であると共に、安全金具本体にカバーを設け金具全体を止水し、裏面にはEPDMシーラーを設け金属棟カバーとの隙間を防ぎ、固定ビスはブチルゴム付ビスを用い室内への侵入を防いでいますので、耐漏水性は非常に優れています。

「金属棟カバー両側固定安全金具」の施工性

EPDMシーラー付安全金具本体を片側5本、両側計10本の固定ビスで金属棟カバーの下地材や野地板に固定し、カバーの取付けにより固定と止水処理が同時にできますので簡単に取付けできます。
固定ビスはドリルビスを用いていますので下穴無しで固定できます。

「金属棟カバー両側固定安全金具」の耐久性

主要部材は耐食性の高いアルミニウムとステンレス部材で構成しており、カバーはガルバニウム鋼板同等品を使用しており高耐久性を期待できます。

今後の取り組み

「金属棟カバー両側固定安全金具」の普及には、施工実績を数多く積む必要があります。新築・既築建物にも設置ができ、住宅や事務所、倉庫、工場、体育館等にも取付けができます。
目立たなくすっきりしたデザインであり、引張り強さや耐漏水性、耐久性に優れ、コストパフォーマンスに優れていることをきっちり説明し、普及品になるまで頑張りたいと考えています。
また、金属棟カバーの仕様はメーカーにより異なり、多くは片方の幅が約105~120mmであるものの、250mm程度の長いものもあり、現地点では取付け位置を明確にはできていません。実績を積みながら最適な取付け位置を明確にし、施工法を確立していく必要があります。ご支援・ご協力宜しくお願い致します。

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