豪雪地帯や特別豪雪地帯において、建物損壊を防ぐために、屋根の雪下ろしが欠かせません。屋根の雪下ろし作業による屋根やハシゴからの転落事故は毎年多く発生しています。これらの事故については、命綱や安全帯などの安全対策をとることで予防することはできますが、命綱を固定するところが屋根には無く、屋根雪下ろし命綱固定アンカー等の設置が必要になります。

雪下ろしをしなくてもよい様に、建物(屋根)の耐圧性を大きくする方法や、水やヒーティング等により融雪する方法等もありますが、費用がかなりかかるため、費用対効果も含め安全に雪処理ができる対策を検討する必要があります。屋根雪下ろし命綱固定アンカーを設置しておけば、想定外の大雪が降った場合にも対応でき、特に、体育館や工場、倉庫等の大きな建物では有効と考えます。

マジカナテック㈱は2017年から屋根安全金具(落下防止金具)の開発に取り組み、

①瓦屋根安全金具(3ﾀｲﾌﾟ)
②化粧スレート屋根安全金具
③タル木固定化粧スレート屋根安全金具
④金属屋根縦葺平部固定安全金具
⑤金属屋根棟固定安全金具

等の開発を行ってきました。しかし、これらの屋根安全金具は命綱を固定できますが、積雪時、雪に埋もれてどこにあるか分からなくなること、使用にあたっては雪を掘り出す必要があり実用的ではないと考えました。

現行品の屋根雪下ろし命綱固定アンカーには、①支柱の低いもの、②支柱の高いものがあり、①支柱の低いものは、アンカーが雪で埋まり掘り出す必要があります。②支柱の高いものは、アンカーが雪に埋もれにくく、見つけやすいのですが、建物に負荷がかかりやすく、しっかりとした構造が必要になります。材料としては、③単管で作ったもの、④ワイヤーで作ったもの等がありますが、支柱の高いものを③単管で作った場合は、自重が重くなり負荷がかかりやすいとか、材料が目立ちやすく、建物の見た目が変わってしまいます。④ワイヤーで作ったものは、部材の加工や製作、設置に時間がかかるということで、いずれのアンカーも一長一短があり、新たな商品開発の余地はまだまだありそうだと感じました。

アンカーの支柱の高さは高い方が実用的であり、

①支柱は高くし、強度や外観性を損なわないデザインを考える。
②取付時間は短い方が良く、数分で設置できるデザインを考える。
③引張り強さは、平均男性体重(約78kg)の10倍の800kgf(8,000Ｎ)以上になるデザインを考える。
④材工価格は現行品より安くなるデザインを考える。

この4点を条件としてデザイン化に取り組みました。

①ベース金具を用いて屋根との引張り強さを確保し、長さ1ｍワイヤーで荷重を受ける様にしました。
②伸縮できる支柱(約1～1.7ｍ)と組み合わせ、
③ベース金具に固定したアイストラップに、ワイヤー下部を取付け、ワイヤーが雪で埋まらない様に支柱約1ｍ高さ位置にワイヤー上部を引っ掛けセットする様にしました。

使用時はワイヤー上部を取外し、ワッカを命綱に固定し使用します。ワイヤーを引っ張ると低い位置のベース金具に荷重がかかるため、建物に負荷はかかりにくく特別な補強等は不要になります。支柱は目印とワイヤー掛けに用いますが、高さを約1～1.7ｍに伸縮できますので、積雪時は最大1.7ｍ迄伸ばし見つけやすくしました。雪の降らない時期は約1ｍに短くすることで目立ちにくくしました。

軽くて高強度、取付け簡単で止水性や耐久性に優れ、しかも低価格、積雪時でもアンカー位置はわかりやすく、雪を掘り出す手間は殆ど無く、なかなかいいものを開発できたと感じています。

【ＹＫ金具】は「単管固定タイプ」と「棟固定タイプ」の2種類を品揃えしました。

「単管固定タイプ」は支柱の低い単管に取付けるものです。支柱の低い単管は、アンカーが雪で埋まり設置位置がわかりにくく、雪を掘り出す必要があるという弱点を、「単管固定タイプ」のＹＫ金具の設置で補完することができます。

「棟固定タイプ」は金属屋根の一文字葺き等の屋根で、単管を取付けにくい屋根や、単管を取付けたくない場合に、屋根大棟部の棟包上に取付けるものです。

屋根大棟部の棟包上に設置する理由は、

1. 両側の屋根の雪下ろしができ、金具数を少なくできます。
2. 最上部で雪の滑落荷重を最も受けにくい位置です。
3. 屋根の最も水上にあり、漏水リスクが最も小さい位置です。更に金具にカバーを取付け、裏面にEPDMシーラーを貼り、ブチルゴム付ドリルビスの使用等の十分な止水処理をしており、雨漏り(漏水)の心配はありません。
4. 金属の一文字葺き(横葺)屋根でも設置できます。
5. 金属屋根棟固定安全金具の実績があり、引張り強さを得るためのノウハウがわかっており、金具仕様に織り込むことができます。

等が上げられます。

屋根雪下ろし命綱固定アンカー【ＹＫ金具】の普及には、施工実績を数多く積む必要があります。

既に設置されている支柱の低い単管にも取付け可能であり、また、新築の住宅にも受け入れられるデザインであり、コストパフォーマンスに優れていることをきっちり説明し、普及品になるまで頑張りたいと考えています。ご支援宜しくお願いします。