屋根安全ネット・取付金具の開発

屋根安全金具と屋根安全ネット(防網)設置の必要性

戸建住宅等の建物の屋根は、2m以上の高さにあり、労働安全衛生規則(第五百十八条)では、「墜落等による危険の防止」として 2m以上の高所にて作業をする場合、【足場を組み立てる等の方法により作業床を設ける】、作業床を設けることが困難なときは【防網を張り、労働者に安全帯を使用させる等墜落防止措置を講じる】ことを義務付けられています。
足場を組み立てる等の方法により屋根に作業床を設けることについては、新築時にはできても、既築の場合、
① カーポートや植木、下屋がある等により作業床を設けられない。
② 台風や地震による屋根破損の緊急修理が必要な時は時間的に作業床を設けられない。
③ 定期点検や簡単な補修等で、短時間で済む作業のために、都度高額な費用や工期がかかる作業床を設置することは実情に合わない。
等の理由で作業床を設置することができない場合が多くあります。安全を確実に確保するためには、費用や取付け時間は少なく、簡単に防網を張り安全帯を使用できるようにすることが重要と考えます。

屋根安全金具の開発について

マジカナテック㈱は2017年から屋根安全金具(落下防止金具)の開発に取り組み、
①瓦屋根安全金具(3タイプ)
②化粧スレート屋根安全金具
③タル木固定化粧スレート屋根安全金具
④金属屋根縦葺平部固定安全金具
⑤金属屋根棟固定安全金具
⑥破風固定安全金具
これにより殆どの屋根に安全金具を設置することができ、屋根作業時に安全帯を使用できる状態になったと考えています。しかし、防網を張る商品の開発はまだできていなく、工具や部品、部材等を作業中に落とした場合、屋根の下に落ち、物品損傷や人身事故を起こす可能性があります。このために防網(安全ネット)を取付ける「屋根安全ネット・取付金具」の開発を急ぐ必要があります。

防網を張ることは本当に必要か?

厚生労働省発行のリーフレット【足場の設置が困難な屋根上作業での墜落防止対策のポイント】「墜落防止のための安全設備設置の作業標準マニュアル」のポイント(2014.7)において、労働者に安全帯を使用させる等墜落防止措置を講じる記載はありますが、防網を張ることは全く触れられていませんので防網を張らなくても良いのでは!と迷います。
防網を張る目的は何なのか?墜落に対し二重の安全を確保するためか?工具や部品、部材等の屋根下への落下を防ぐためか?等考えられますが、いずれにおいても事故が生じ防網を張っていない場合は「法を順守していない」と指摘される可能性は十分あり、危険な部分だけでも防網を張る方向で進めておく方が良いと考えます。
また法規制だけでなく、軒先付近に防網があると作業時に安心感があると共に工具や部品、部材等の落下による事故を防ぐことができ、やはり防網を張ることは必要だと考えます。

「屋根安全ネット・取付金具」の開発について

屋根用安全ネット(防網)や取付金具の普及商品は無く、新たに商品を開発する必要があります。
取付金具については、強度及び耐漏水性の高い屋根安全金具を利用することが最も効果的と考えられるため、屋根安全金具のベース金具にアングルを用い約500mmの支柱を組立て、12mmロープを上下にし、目合い25mmネットを取付け張ったところ、工具や部品、部材等を落としても、十分受け止める強さがあることを確認しました。
人は屋根安全金具で受け、屋根安全ネットは軽い工具や部品、部材等を止めることを基本とすれば開発は簡単で、屋根軒先部に取付金具を取付け、安全ネットを張るだけで済み、簡単施工で安価で設置でき、法の順守と屋根作業時の安全を確保できます。

「足場レス工法」と「足場設置工法」の比較

屋根安全金具と屋根安全ネット(防網)を用いた「足場レス工法」はどの様な時に有効なのか明確にするため、「足場設置工法」との比較を行いました。
(注:屋根・建物等の条件により異なりますが、おおよその数値と独自評価を入れました。厳密な比較ではありません。)
足場レス工法 足場設置工法
1)1棟あたりの費用 約2~5万円 約10~15万円
2)設置・撤去時間 約1~2時間 約1~2日
3)屋根への上り下り はしご利用時、はしごの固定や昇降時の安全対策必要 はしごを足場に固定しているが昇降時の安全対策必要
4)安全帯の必要性 使用必須 原則必要
5)落下物のくい止め 安全ネット(防網)で防げる 足場に防網を設置していない場合くい止めできない
6)足場を設置出来ない場合 工事可 工事不可
7)繰り返し使用する場合 金具は何度も利用でき費用不要 都度費用と時間がかかる
「足場レス工法」は、屋根にはしごを掛けて上り下りすることや、安全帯の使用が必須なことから、「足場設置工法」に比べ安全性や作業性は若干劣るものの、安全対策費用や設置撤去時間は少なくて済み、一度金具を取付けたら何度も利用できるという特長があります。「足場レス工法」は
①足場を設置出来ない場合
②緊急を要する作業
③短期間・短時間の作業
④小規模工事
⑤繰り返し使用する場合
等では有効ではないかと考えます。「足場設置工法」は長期間の作業や大規模工事の場合は有効であり、両工法の使い分けが必要ではないかと考えます。

適応する屋根について

屋根安全ネット取付金具を取付けられる屋根は、野地板は構造用合板9mm以上を用いている屋根で、
①化粧スレート屋根
②金属屋根の平部
③アスファルトシングル屋根等の屋根に使用できます。
④瓦屋根は瓦上では使用できませんが、瓦を取り除き、野地板・ルーフィング上に取付ければ使用できます。
⑤金属横葺きの屋根は強度を確保できないため使用できません。

屋根安全ネット・取付金具の仕様について

屋根安全ネット・取付金具は新たなもので、暫定仕様を決め、必要に応じて改良していこうと考えています。
取付金具の支柱の高さは約500mm、固定ピッチは約1.8~2.7m程度が適当と考えられ、これを基本とします。それに合わせ屋根安全ネットは幅1mで目合い25mmを二つ折りにし、長さは1.8~2.7mとして、上下に12~9mmのロープを通し、取付金具に固定するためネットの外側に両端1m程度ロープを出しておくことを基本とします。ネットの目合い25mmだけだと、ナットやワッシャー等の小さい部材は通り抜けるため、目合い4mm程度のネットを複合したものを基本とします。
屋根とネットには隙間が生じやすく固定もしていないことから、小さい部品は隙間から抜け落ちる可能性があります。ネットの下部ロープが屋根面に強く接して固定できることが必要であり、取付金具仕様に織り込んでいます。また、屋根材に凹凸がある等で大きな隙間が生じる場合の対応策としては、下部の4mmネット端部を100mm程度出しており、養生テープ等で屋根材に貼り合せ固定することで、抜け落ちを防ぐ様に考えています。
支柱とネットは作業が終わると取外し他の現場で再利用できますが、ベース金具は取外すと漏水の可能性があり、次回の即座の利用ができることから取付けたままとします。

今後の取り組み

「屋根安全金具」については、販売を開始して5年経ち、雨漏り等のクレームは皆無で、信用を付けつつあります。
「屋根安全ネット・取付金具」をラインナップし、屋根からの転落事故や工具・部品・部材等の落下をなくし、物品損傷や人身事故を減らすのに貢献していきたいと考えています。今後ともご支援宜しくお願いします。

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